モルディブ共和国(Republic of Maldives)はインドの最南端の東にあるスリランカから南西に進んだ、赤道付近にある小さな島々です。
私たちが訪れたのは、1984年の11月のことでした。空から見たモルディブは、まさに、エメラルドグリーンの海のキャンパスの上に、いくつも浮かぶ美しい貝殻。この国は、首都だけの島、空港の滑走路だけの島、一周するのに30分もかからないリゾート専用の島など小さな約1,200の島で成り立っていて、面積は 298km2(佐渡島の約0.35倍)、 人口 27万人(2000年)、そして、標高は2m以下です。
降り立った滑走路の横は、すぐ波打ち際で、空港の施設には各リゾートの島へ向かう小さな船が横付けされています。その船に乗り、宿泊地の島に到着すると、こじんまりとした自然を生かしたコテージが並んでいて、お客はほとんどがヨーロッパからの長期バカンスの人たち。日本人はダイビングかトローリングが趣味の数少ない限られた人だけでした。
海に出ると、砂浜は真っ白に近いパウダーのようで、同じ隆起珊瑚でできた島なのに、星砂や太陽の砂でできている沖縄の西表島のベージュがかった砂との違いに驚きました。海の中に腰まで入り、朝食で出されたパンの残りを放り投げると、もう、それこそ前が見えないぐらい熱帯魚が寄ってきます。おまけに、サメも波打ち際まで寄ってくるので少し恐い思いもしましたが。
このような美しい島が、今、海の中に沈もうとしています。
1987年モルディブの首都マレ島を襲った高潮の被害は、島の三分の一が浸水するほど大きなものでした。その後、日本の無償援助(ODA)で島の周囲約6.8kmを囲う護岸工事が施され、海面から約三メートルの高さまで積み上げた消波ブロックは計4万個にまでもなり、景観は壊れてしまいましたが、安全のためには仕方がないところです。しかし、他の島は、ほとんど自然の地形のままで、標高はせいぜい1メートルまでのところが大半です。
現在、水面の上昇で海水の圧力が高くなり、地下水に海水が混ったことから、一部の島では、既に地下水が飲料水としては使えなくなりました。また、海岸の浸食もひどくなり、ヤシの木が倒れたり、失われた砂浜を回復させるために大型機械で修復作業がなされている島もあります。
同じようなことが、南太平洋にあるツバルでも起こっています。ツバル政府はオーストラリアとニュージーランドに国民の受け入れを要請しましたが、オーストラリアは受け入れを拒否し、ニュージーランドは移民政策として年間75人だけ受け入れることを認めました。ちなみに、オーストラリアはアメリカに続いて京都議定書から離脱した国です。
また、島ではありませんが、バングラデッシュのベンガル湾では、稲作で生計を立てている人々の稲田に、これまでにはなかった潮が満ちてきており、田んぼが海に沈みつつあり、彼ら彼女らはなすすべがない状況です。
このような現実を見るにつけ、世界中では1億人以上の人々が海抜1m以下の低地で暮らしているという現実を考えると、これからの私たちの行動につなげていく必要があるのではないかと考えてしまいます。
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