日本における屋上緑化は、集約型緑化で、特に近年は、庭園や緑地・公園をつくる例が増えています。この場合の植物の使い方は、地上で行う緑化と同じため、集約的な管理が必要です。培土は厚くなり、層も多層になります。
一方、自宅の屋上緑化としては、最近では、手軽にできる屋上緑化として、培土も薄くてすみ、乾燥にも非常に強いセダム類を使った例が増えてきています。
屋上緑化の目的をもう一度振り返ってみましょう。「ヒートアイランド化の防止」、「建物の断熱」といったことに少しでも寄与するところにあるのではないでしょうか。しかし、このベンケイソウ科セダム属の植物は、CAM型光合成を行うため、乾燥に耐えるために太陽の当たる日中は気孔を閉じています。このため水分の蒸散を行わず、蒸散効率も低く、「植物の蒸散によって周辺温度を下げる。」という屋上緑化の目的を達成することはできません。
このことは、東京都環境科学研究所でも検証され、これを受け、従来から屋上緑化を推進してきた東京都は、セダム以外の植物を植えるよう働きかけていくこととしています。
また、セダムは外来種のため、種子などが風や虫・鳥によって拡散し、周辺の植物の生態系に影響を与えることも考えられます。ブラックバスやブルーギルが各地の湖で在来種の魚を絶滅寸前にまで追い込んでいるように、セダムは繁殖能力も強いため、同じ事が起こらないとも限りません。
同じ屋上緑化を行うのなら、乾燥にも強く、繁殖能力も強い、雑草による屋上緑化をお勧めします。雑草というと手入れをしない不精な人と思われるためか、日本では忌み嫌われていますが、環境先進国であるドイツでは、1970年代頃から粗放型緑化が主流となっています。
これは、自然に近い形で植栽され、ほとんど手を入れなくても維持・成長する植生です。使用する植物は、緑化場所の極端な状態に適応できる保水力の高い植物で、中部ヨーロッパの固有種などの苔、多肉植物(セダム)、ハーブ、草花で構成されていますが、自然の流れによって変化し、外から入った植物が根をおろすこともあります。この粗放的屋上緑化は通常、低コストで施工・維持管理が可能なものです。ドイツでは、屋上緑化に占める粗放型緑化の割合は90%に上っていますが、集約型は10%に過ぎません。
かつて子供たちは、学校の行き帰りなどで、ぺんぺん草(音を鳴らす)や、えのころ草(握ると上下に動く)、おしろい花(落下傘・白化粧)、アレチヌスビトハギ(引っ付き虫)、クローバー(髪飾り)、タンポポ(種を吹き飛ばす)、スズメノテッポウ(笛)、カラスノエンドウ(笛)、ススキ(ふくろうを作る)、つくし(家で料理)などを使って友達同士で遊びながら雑草と触れ合っていましたが、今の子供たちの中には、雑草との遊び方を知らない子供も増えてきています。そもそも、雑草という名前の草も分類も存在しないわけですが、日本人の綺麗好きが高じて嫌われ者になったのでしょうか。
キオソープ(雑草公園)と言う観念は日本では全くといっていいほど定着していませんが、雑草が生えるのは実に自然の営みではないかと感じています。最近では、唯一、へーベルハウスが「屋上に草原のある家」というコンセプトで発売を始めました。雑草による屋上緑化であれば、5つ星を付けたいと思っています。
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