マイナスイオンについて、中江茂教授(東京理科大学)は、
「人体への効果との因果関係については、1970年以降400編近い論文が発表されてい
る。ただ、分子レベルのメカニズムが解明されていないが、その大部分は効果ありと
する論文であり、客観的には(マイナスイオンは)有益であると考える。また、生理
学的効果、医学的効果に関する論文があることから同様の手法で検証することは、測
定環境を整えた上で周到な実験をすれば可能。現在、マイナスイオンは測定値にばら
つきが多い。今後JIS(日本工業規格)等、公的測定方法が作られるべきである」とし、
一方、安井至教授(東京大学)は、
「無効とする論文も多く、マイナスイオンと人体への効果との因果関係は十分に究明
されていない。オゾンや湿度などの効果ではないという検証も不足している上に絶対
量があまりにも少ない。空気中を浮遊する微粒子の中で負の電荷を帯びた酸素と空気
中の微少な水の分子が結合したものであろうが、組成もわかっていない段階で効果を
売り物にする商品の販売は無責任である」としています。
また、日本生活協同組合連合会は、発生方法のタイプ別に極めて慎重な姿勢を打ち出しています。
1「水破砕型」はレジオネラ菌対策が十分な製品だけを「加湿器」として取り扱う。
2「放電型」は、オゾンの発生量を確認し、環境基準を超える恐れがある場合は扱わない。
3 放射性鉱石を応用した「放射線型」の寝具などは、微量であっても被曝について慎重な見方があるために取り扱わない。
4 宝石の一種でマイナスイオン効果をうたうトルマリン製品については「科学的根拠がない」として扱わない。
さらに、国民生活センターは、
1 消費者はマイナスイオンを謳った商品の効果を期待して使用するが、期待通りの効果が分からない。
2 マイナスイオンの発生量表示は、あるものも、ないものも。発生量を表示してもその数値と人体への効果との関係が明確でない。
との結論を下し、
1 マイナスイオンの効果を謳うのであれば、検証をして、その情報を消費者にわかりやすく提供してほしい。
2 マイナスイオンの発生量を表示するのであれば、表示する数値の根拠も含めてその情報を消費者にわかりやすく提供してほしい。
ということを業界に要望したのと同時に、公正取引委員会に情報提供をしていますが、業界からは、きっちりとした反証はありません。。
これらのことから、マイナスイオンに関しては様々な文献が存在しますが、少なくとも現時点では、
1 マイナスイオンが何なのか、その定義自体が明確に定まっていない。
2 検証方法がメーカーによって異なっている。あるいは、検体が少なすぎる。
3 人体への影響がマイナスイオンの効果なのか、否か、相当な因果関係まで検証されていない。
4 高圧力状態ならともかくトルマリンのブレスレットやシート、布団など通常の使用では変化が出るはずがない。
といった点については、事実としてとらえてよいと思います。
マイナスイオンに関しては様々な書籍が出版されていますが、そのすべてが科学的な根拠や検証がないまま、効果?だけが記述されています(不充分な検証結果は記載されていますが)。そのような視点でこれらの本を読むと面白いかもしれませんが、購入するのはもったいないですね。もちろん、現在の科学は未解明な分野も多々あり、万能ではありませんが、既に解明されている分野までいいかげんな話をして、それで本を売って儲けるなんて、普通の神経では考えられません。
マイナスイオンは、これまで、「発掘!あるある大辞典」など多くのTV番組でも取り上げられましたが、マスコミはきっちりと取材をしたもの以外でも、視聴率が上がれさえすれば何でもセンセーショナルに取り上げるということは、周知の事実です。最近では、大手メーカーは徐々に「マイナスイオン商品」を扱わなくなってきています。私たちは、かしこい消費者になる必要があります。
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