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石鹸VS合成洗剤
地球温暖化・環境問題:石鹸vs合成洗剤、どちらが地球環境にいいのか
「石鹸も合成洗剤も環境に悪いのです。」そう言うと、意外に感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。「そりゃ、石鹸に決まってるだろ!」って。
それでは、少し詳しく見てみましょう。
確かに、初期の合成洗剤は、ABS(分枝鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩)で河川などで微生物によって分解(生分解性)されにくいために、川に泡が大量発生し、この泡が空気中の酸素の河川水への溶解を阻害するために、河川の自浄作用を低下させて問題になりました。
また、1970年代には、合成洗剤に含まれていたリンが、富栄養化の原因物質、すなわち水中の藻類や植物プランクトンを大量発生させる栄養源(=肥料)になって、結果的に酸素不足の水になってしまって、魚などが死ぬという事態を招き、特に琵琶湖で大きな問題になりました。
このように、初期の合成洗剤は環境面に大きな問題を抱えていましたが、現在では、これらの問題は改善されて、LASや高級アルコール系、無リンを成分とするものに変化してきています。また、一時期、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)の奇形問題が取り上げられましたが、因果関係がないと結論付けられています。
2001年に化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)が施行され、LASが第一種指定化学物質に指定されていますが、下水処理場などで99%、その他の排水も水中の微生物で分解されてしまうため、人体や水生生物に影響を与えることはありません。「化学物質ファクトリーシート2003年度版」(環境省)
さらに、メダカが石鹸水よりも合成洗剤が溶けた水の方が早く死ぬというショッキングな実験もありました。これは、石鹸の洗浄力が弱いことから、水中の硬度成分と結合してカルシウム石鹸(固形物)になり、界面活性剤としての能力が格段に落ちますが、合成洗剤は、界面活性剤としての効果は、石鹸の数倍強いことから、エラ呼吸をする魚は、界面活性効果の高い合成洗剤の場合に早く死ぬということから当然のことです。
しかし、これをもって石鹸の方が生物にやさしいということにはならず、逆にBOD負荷は数倍高いことになります。つまり、石鹸が生分解性が高いからといっても、全く環境に無害ということではなく、水中の酸素を減らすことについては、合成洗剤の数倍大きいということです。
また、石鹸に含まれる脂肪酸には発ガン性の危険性があることも指摘されていますが(ザックス有害物質データブック)、まあ、通常の使用状態なら問題もないことといえます。資源的な問題だけをとらえると、石鹸は合成洗剤に比べて数倍以上の油脂を使いますし、植物油脂から採取する高級アルコールの合成洗剤では、パームヤシなどの栽培のために熱帯林などが焼畑で失われています。
結論的には、どちらを使用するにしても環境に負荷をかけているということであり、できるだけ使用
を控える必要があるということです。しかし、リサイクルという観点からは、廃油からつくる石鹸は、少しだけ環境にやさしいといったところでしょうか。
現在では、環境問題に敏感なコープ神戸など各地の生協でも、改善後の合成洗剤に対しては、従来のような反対運動は行ってはおらず、大手企業の商品の糾弾だけを目的とする現在の運動とは、袂を分かちました。このことは、環境問題の運動がイデオロギーに流れがちな中にあって、きっちりと科学的な論証を踏まえた結果を大事にするという消費者運動の基本に基づいたものだと評価したいと思います。
しかし、ある意味で自治体のバックアップを受け、公的な機関ともいえる一部の「消費者協会」なる団体が、科学的な根拠を示すことなく、今でも石鹸推進運動を継続していることについては、その団体の知性までも疑ってしまいます。
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